目的: 高分子固体は機能性材料として,応用が期待されて久しいが,実用化を実現
した例は甚だ少数である.高い機能性をもつ高分子を得るためには結晶の示す物理的
性質と構造との関連を正確に理解する必要がある.一方,低分子結晶の研究分野にお
いては,古くから,結晶のもつ巨視的対称性に注目し,この対称性が結晶の示す物理
的性質にどのように反映されるかが調べられてきた.これは,いわゆる古典結晶物理
学として学問的に確立され,理工学の広い分野で利用されている.ここでは,古典結
晶物理学を利用して,高分子結晶の理解を深めることを目的とする.
内容: はじめに古典結晶物理学における結晶学を中心に紹介する.特に結晶の巨
視的な対称性を記述する結晶点群,空間群などを群論を基に解説する.ついで,結晶
の示す物理的性質を記述する物理量を極性テンソルと軸性テンソルに階位を含めて分
類し,結晶の持つ対称要素が物理量に如何に反映するかを詳細に解説する.つづいて
,ここで解説した古典結晶物理学を,高分子結晶に適用し,その有用性を示す.また
古典結晶光学の利用についても,実験例を含めて解説する.
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