授業概要 |
物質移動に初めて出会った人は、これはいったい何だろう!、と思うに相違ないと
思います。物質移動という言葉から連想されることは、何らかの力によって物理学的
に定義される物(一定の質量を持つ対象)が移動する現象であろ、と想像するのでは
ないでしょうか。それも言葉の意味において間違ってはいません。しかし、化学工学
が対象とする物質は、素粒子や原子および分子の集合体である単体や化合物そのもの
です。これらの物質がその濃度差(正しくは活量差)に基づいて移動する現象を物質
移動というのです。この物質移動は、主に流体の境膜(流れに置かれた物体の表面に
は乱流境界 層が生ずるが、この境界層内部で最も表面に近い極めて薄い層流の部分
)を通す拡散現象なのです。本講義では、目的とする化学物質を分離する場合に必要
な基礎知識である異相間の物質移動について、その現象と理論を理解することです。
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授業計画 |
第1--3週 拡散と物質移動
拡散、物質移動、物質移動係数、相平衡
第4--6週 物質移動の基礎式
流れの機構と物質移動、基礎式の導出、無次元数とその物理的意義、
物質移動に関するモデル的考察
第7--9週 層流場の物質移動
物質移動の境界条件とその特異性、平板からの物質移動、円管内お
よび固体
球表面からの物質移動、気泡および液滴からの物質移動
第10--12週 乱流場の物質移動
乱流、乱流移動現象の工学的取扱い、円管内乱流速度分布と摩擦係
数、乱流場
に置かれた平板からの物質移動、運動量移動と物質移動との相似性
、アナロジ
の適用限界
第13--15週 反応を伴う物質移動および熱と物質の同時移動
反応の物質移動の複合現象、瞬間反応を伴うガス吸収、非瞬間反応
を伴うガス
吸収、液膜による反応吸収、熱と物質の同時移動現象、純液の蒸発
と湿球係数
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成績評価の方法 |
筆記試験および演習、レポートの結果を総合し成績を決定する。
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テキスト |
浅野康一、物質移動論、共立出版、1,500円
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参考書 |
大矢晴彦・諸岡成治、工学部学生のための移動速度論、技報堂、3,700円
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履修にあたっての留意点 |
常微分や偏微分の概念などもう一度見直すこと。また、予習および復習を忘れずに。
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授業の目標・ねらい |
異相界面を通す物質移動現象に関する物質収支、流れや化学反応の影響および熱と物
質の同時移
動などに関んする理解と修得です。
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学生へのメッセージ等 |
日常生活の中にもこの科目を理解するのに役立つ現象もあります。楽しく学んで下さい。
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