自然界での動植物の生命維持活動、すなわち生体内の化学反応は、ほぼ中性の水溶液
中、常温、常圧のもと、酵素の働きによって高効率的に、しかも高選択的に行われて
いる。酵素のこのような優れた機能やその他の生体機能を人工的に再構築し応用する
事は、化学技術の一つの大きな目標である。
これらの生体機能を分子レベルで理解する上で必要な、有機分子の形、分子間の相
互作用について考察し、これらをもとに酵素反応と生体膜を通しての物質移動、輸送
の仕組みの概略と、それらの分子レベルでの人工的な再現と応用の試みについて述べる。
|