授業概要
山村には、平地の農村とは異なる独自の文化と民俗が存在する。岩手県の遠野市の民話や昔話を題材とし
た柳田国男の『遠野物語』は古典的著作として知られているが、今や、近代化と過疎化によって、日本の山
村の生活文化と民俗は消滅の危機にさらされている。
しかし、山村の文化と民俗は、後背地としての山野(森林)を有効利用したものであり、現代社会にお
いて改めて注目すべき部分も少なくない。環境と地域文化との関連、資源の有効利用といった今日的課題を
問い直すためにも、失われつつある山村の文化と民俗の具体像を認識することは重要である。今日的には、
日本固有の伝統文化としての山村文化は、いわば「異文化」になりつつあるともいえるが、一方では、海外
の諸民族の様々な文化や生活様式を理解する上で共通する側面も少なからず存在するため、異文化理解の一
環としての教育効果も期待したい。
具体的には、山村の文化と民俗について概観した後に、山形県の出羽三山信仰に関わる山の文化と民俗
を中心として講義を進める。
授業計画
山村の生業(狩猟採集・山菜とキノコ・焼き畑と林業)、山村の文化(照葉樹林文化とブナ帯文化)、山
村の過疎化(開発と自然保護)、山村と山岳信仰(宗教集落・信仰登山・修験と山伏・山中他界)
成績評価の方法
受講生各自が山村に関する簡単な地域調査・文献調査のレポ−トを提出することによって行う。
テキスト
岩鼻 通明『出羽三山の文化と民俗』岩田書院、1996年、本体価格2300円。
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