授業概要
最近、憲法の議論が低調になってきたように感じる。昨年の憲法施行50周年も盛り上がりに欠け、憲法を原点に立ち返って見直し「心に刻む」ことはできなかった。
しかし、日本国憲法がいま大きな転機にあることは確かだ。半世紀前の日本は占領下の非武装弱小国であり、国民は最低限の衣食住にも事欠く有様だった。ところが戦後、日本は驚異的な回復と発展を遂げ、いまや世界屈指の経済大国となり、軍事的にも近隣諸国に潜在的脅威を与え始めた。この半世紀の日本の変化は大きく、日本国憲法がその激動の時代を生き抜いたことは奇跡的ともいえるが、他方で不動の憲法と激変した政治的・社会的・経済的現実との間の矛盾が拡大し、もはやそれをごまかし通せなくなったことも事実だ。天皇は元首か、国民とは誰か、自衛隊は憲法違反か、教科書検定は検閲か、死刑は廃止すべきか、外国人にも選挙権を認めるべきか、地域政府と中央政府との関係はどうあるべきか。私たちは今、憲法と現実との矛盾から生じるこうした様々な問題に目を向けざるをえなくなったのである。
この授業では、平和と人権に関する規定を中心に憲法を考察し、それらと現実との間にどのような矛盾があるかを考えていく。そして、そうした理論的分析をふまえ、憲法と現実との矛盾をどう解決すべきかという問題、つまり見て見ぬ振りをするか、憲法を現実に合わせるか、それとも現実を憲法に合わせるかという----個々人の態度決定とも密接に絡む----実践的な、危険だが面白い憲法問題へと議論を進めてみたいと思う。
授業計画
1.立憲主義と民主主義
2.日本国憲法と平和
3.日本国憲法と人権
成績評価の方法
期末試験により評価。
テキスト
初回講義時に指示する。
参考書
講義中にそのつど紹介する。
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