工業熱力学
 Engineering Thermodynamics
 担当教員:安原 薫(YASUHARA Kaoru)
 担当教員の所属:大学院理工学研究科(工学系)機械システム工学分野
 開講学年:3年,4年  開講学期:前期  単位数:2単位  開講形態:講義
 開講対象:システム創成工学科  科目区分:専門科目 
【授業概要】
・テーマ
人類は、熱から力学的エネルギーを得、逆に力学的エネルギーを熱へ変換することで、現代機械文明の根幹を築き上げてきた。しかしながら、熱やエネルギー自体を見ることは難しく、現象を把握するためには、理論的に想像しなければならない。本授業では、「基礎熱力学及び演習」で学習したことを基に、熱力学が現代の発電所や自動車等のエネルギー変換にどのように応用されているかを解き明かしていく。具体的には、基礎熱力学及び演習で学んだ熱力学第一、第二の法則を復習し、エントロピーの概念を理解する。続いて、蒸気の性質に関する基礎知識を学んだ後、ランキンサイクル及びさまざまなガスサイクル等、現代のエネルギー変換システムの基礎を理解する。
・到達目標
・理想気体の各状態点、状態変化における温度、圧力、体積、熱量、仕事等が計算できる。
・熱力学第二法則及びエントロピーの概念を説明でき、これらに基づいた状態量の計算ができる。
・蒸気の性質及びランキンサイクルについて状態を説明でき、Pv線図、Ts線図上で表現でき、各過程での熱量、仕事、工業仕事ならびに熱効率の計算ができる。
・オットーサイクル、ディーゼルサイクル、ブレイトンサイクルを理解しそれらのPv線図、Ts線図が描け、各過程での熱量、仕事、工業仕事ならびに熱効率の計算ができる。
・ヒートポンプの仕組みおよび各過程を理解し、逆カルノーサイクルの熱効率の計算ができる。
・キーワード
熱力学の第二法則,エントロピー,カルノーサイクル,有効エネルギー,蒸気の性質,熱効率,ランキンサイクル,オットーサイクル,ディーゼルサイクル,その他ガスサイクル

【科目の位置付け】
この科目は学習・教育目標のB.専門分野の基礎力に対応します。

【授業計画】
・授業の方法
授業は1回90分全15回。講義を中心とし、講義内容に応じた演習問題を解きながら進めます。
・日程
第1週…基礎熱力学及び演習の復習
・各種状態量の計算
第2-3週…カルノーサイクル
・熱力学第2法則とともにカルノーサイクルを理解し、各状態点や各過程の熱量、仕事、熱効率の計算
第4-5週…エントロピー
・エントロピーの概念の理解、計算
第6週…閉じた系及び開いた系の有効エネルギー
・各状態におけるエクセルギーの計算
・演習
第7-8週…蒸気の性質、蒸気表及び蒸気線図の使い方
・相と相平衡
・蒸気表及び蒸気線図の使い方
・相対湿度と絶対湿度
第9週…まとめと中間テスト
・熱力学の基礎計算のまとめと中間テスト
第10週…中間テストの復習。ランキンサイクル序論
・中間テストの解答
・熱力学の応用例
・ランキンサイクルのPv線図、Ts線図
第11週…蒸気動力サイクル
・ランキンサイクルを基に、蒸気動力サイクルの各状態点の計算、熱量、仕事、熱効率の計算
・蒸気動力サイクルの高効率化
第12週…オットーサイクルとディーゼルサイクル
・ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの違い
・それぞれのPv線図、Ts線図、状態量、熱量、仕事、熱効率の計算
第13-14週…様々なガスサイクル
・ガスタービンサイクル、ジェットエンジンサイクル (ブレイトンサイクル)
・ヒートポンプ (逆カルノーサイクル)
・その他、様々な熱機関の構造
第15週…まとめと期末テスト

【学習の方法】
・受講のあり方
講義中にランダムに質問します。講義に集中し、ノートをきちんと整理すること。もし理解できなかったら、すぐに質問するか、理解できない部分を教科書で見つけ後から質問すること。
・授業時間外学習へのアドバイス
《予習》授業計画を参考にしながら、教科書で講義内容に当たる部分を読むこと。
《復習》演習問題集を配付し、各回課題を出します。また、対応する問題を自分で自主的に解いてください。
演習問題集の解答は授業中に一部することもありますが、解答集の配布はありません。分からない問題は質問に来てください。

【成績の評価】
・基準
熱力学における物質の状態量について計算することができ、エントロピーや有効エネルギー(エクセルギー)等の概念を説明できる。また、それらを基に様々なサイクルの各状態、各過程において、その状態量および熱量、内部エネルギー、エクセルギー、仕事、工業仕事を計算し、熱効率を求めることができることを合格の基準とする。
・方法
中間試験(30%)、期末試験(70%)の合計で評価する。合計が60%以上を合格とする。

【テキスト・参考書】
[テキスト]
熱力学きほんの「き」小山敏行著 森北出版 定価 2800円 (2012) 
[参考書]
専門基礎ライブラリー 熱力学 事例でわかる考え方と使い方 実教出版 定価 本体2,300円+税 (2011)
JSMEテキストシリーズ 熱力学、丸善、2,000円 (2003)
齋藤武、他、 工業熱力学通論(第2版 日刊工業新聞、3000円 (1999)
谷下市松 北山直方、図解 熱力学の学び方(第2版、オーム社、3,360円 (1982)

【その他】
・学生へのメッセージ
自動車やジェット機のエンジン、発電所のしくみ等、身近でありながら普段見ることができない機械の中の熱力学的現象を、理解、想像できるようになります。また、概念の理解は難しいですが、熱力学の問題の解法は意外に簡単です。
講義中はテキスト、ノート、電卓を常備してください。
・オフィス・アワー
居室:7号館109号室(オフィスアワーは学科掲示板を確認してください。)また、質問はこれ以外にも、随時受け付けます。

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